潮騒
みなさんこんにちは!
つぼいさとしです。
本日は最近読了した、こちらの本をご紹介させてください。
『潮騒』
三島作品の中で唯一と言っても過言でない、
純然たる『青春恋愛物語』です。
まだ彼が29歳の頃の作品ですが、その才能はまさに圧巻。
簡単なあらすじ(紹介)と、
読了した後で私が感じたポイントをお話させてください。
是非最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
▼簡単なあらすじ(紹介)
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主人公の新治は、
伊勢湾の小島、歌島で船乗りを生業とする青年。
ある時、島では見慣れぬ純白な少女、初江と出会う。
彼女との出会いで、心はざわめき、
若者の人生という名の景色は一気に広がりを見せる。
しかし、広がりを見せた世界は苦しみに対しても門戸を広げる。
様々な苦難が間に割り込み、新治と初江の純愛を阻む。
美しい自然の恩寵、二人の清らかな体の接触、
純愛を阻む周りの人間の感情の交錯、
その全てを三島由紀夫の生み出す華麗な日本語が飾りつける。
文学史上最も澄明な青春物語が、そこにあります。
▼美しい表現
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三島作品全体でそうですが、
やはりなんと言っても、三島由紀夫が生み出す美しい日本語表現。
本作でもそれが随所で輝きを帯びていました。
特に本作では、人の肉体に対する表現が生々しく性的で、
しかし美しさや儚さを感じる表現が私の目を惹きました。
例えば、、、
※厳格な初江の父、お風呂場での一コマ
「しかしその老いの裸はさすがに見事である。
赤銅色の四肢には目立ったたるみもなく、鋭い目と、頑強な額の上には、
獅子の鬣のような白髪が乱れ逆立っている(中略)
隆々たる筋肉は久しく使われないために硬くなり、
それが波に打たれていっそう峻しくなった巌の印象を強めるのであった」
なんだか勇ましい、威厳のある船乗りあがりの初老の男性を、
強くイメージできませんか?
三島由紀夫の肉体に対する飽くなき情念と美的感覚は、
圧巻以外に表現する言葉が見つかりません。
ここまで肉体に対してリアルに書いても、
生々しくなりすぎずどこが美しさを感じるのは、
三島由紀夫の卓越した語彙力と、表現力が成せる技の結果であろうと、
強く感じました。
▼印象的なシーン
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これは本当に印象に残ったのですが、
新治と初江が、初めて裸を見せ合い、触れ合うシーン。
生々しく思うと思いますが、是非実際に読んでその表現をみてほしいです。
なんと美しい表現であり情景だろうと、誰もが必ず感じると確信しています。
嵐の日に灯台で待ち合わせた二人。
新治は初江を待つうちに眠ってしまい、目を覚ますと、
濡れた服を脱ぎ焚き火で暖をとる、初江の美しい肉体が眼前にあった。
気づかないふりをする若者。
それがバレて恥ずかしがる初江。
その後に繰り広げられる、生々しくも水々しい男女のウブな会話。
嵐が急に激しさを増し、彼らの心もさらに興奮状態に。
「その火を飛び越してこい!」
西洋の儀式の様に、初江は新治にこう言います。
このシーンがまあ、、、、、なんか良くて!!!
#急に語彙力失うなw
いろんなしがらみを乗り越える、問われる覚悟。
新治のその後の行動はぜひ、読んで確かめてみてください!
▼まとめ
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三島由紀夫の作品といえば、
作品のいたるところで「死」「血」それにまとわりつく生々しい「美」、
これらのことが多く描かれていて、正直読む人を選ぶ作家さんだな、、、
なんて思っていたのですが、、(私はそこが好きですが)
この作品は、いい意味で濁ったものがないのです。
全てが澄明な世界であり、
いくつもの困難、災難はあれど、最後まで彼らの純愛はゆっくり育まれ、
ハッピーエンドで終わります。
そしてその舞台が、都会と隔絶された美しい自然に囲まれた小島であることも、
対照を帯びてより輝きを作品に持たせている気がします。
「なんか同性愛とか、結構ドロドロした感じの作品なんでしょ?」
と三島作品を読んでいると周りの友人から言われることがあります。
でもこの潮騒からわかる通り、
徹底的に、そして圧倒的に、人を描ききることで爆発する彼の作品の力は、
筆舌し難いものがあります。
ぜひ騙されたと思って、
なんでもいいので三島作品を読んでみてほしいです!
それではまた次の記事でお会いしましょう!
▼本を出版しています。レビューなど書いてくださると泣いて喜びます(ΩДΩ)